インプラント手術後のケアについて知りたいこと Question5
Q1 総インプラントをする予定です。フィクスチャーを入れたあと、第二次手術まで半年もありますが、その間、以前に使っていた入れ歯は使えるのでしょうか?Q2 手術のあとの食事について教えてください
Q3 インプラントの義歯を使い始めてから、隣の歯が悪くなりました。また、追加のインプラントを入れないといけないでしょうか?
Q4 インプラント義歯は壊れることはないのですか?壊れたらどうするのでしょうか?
Q5 天然歯にある歯根膜がないために危険だといわれていますが、問題ありませんか?
Q6 おせんべいやステーキなど、何でも不自由なく噛めますか?
Q7 インプラントは歯槽膿漏になりますか?
Q8 インプラントは天然歯以上に、丁寧に歯を磨かなければいけないと聞きました。どんな磨き方をすればよいですか?
Q9 定期検診について教えてください
A. 心配する必要はありません。骨と結合するインプラントが使われ始めて約35年、歯根膜がないことで問題が起こったと思われるケースは皆無です。
天然歯は、根っこの部分が歯槽骨に埋まっているかのように見えます。しかし、じつは歯根と歯槽骨の間には、歯根膜という幅20ミクロン程度のごく薄い組織が存在しているのです。歯根面に付着している繊維と骨面に付着している繊維が絡み合うようにして歯根膜を形作っていますので、歯にとって歯根膜は、たとえて言うならトランポリンの周りにあるゴムのような役割をしていると言えます。歯に大きな衝撃力がかかったときには、歯根膜は感覚受容器となってその衝撃を察知し、歯と骨に破壊的な力がかかってしまわないように条件反射的に口をあけさせる役割を果たしています。
ところが、インプラントにはこの歯根膜がありません。大きな力が加わってもこの開口反射が起こらないはずだから、致命的な破壊をインプラントにもたらすのではないか、という懸念が抱かれているのです。 そのきっかけとなったのは、1991年にボムテらが行った実験です。天然歯とインプラントに機械的な刺激を加えて、咀嚼に使われる咬筋の筋電図波形を分析したところ、インプラントに衝撃的な過重が加わった時には、骨に加わる力をコントロールできなかったという結果が出ました。この報告から、歯根膜のないインプラントは危険だという見解を、多くの歯科医が持つようになってしまったのです。
しかし、1992年、日本歯科大学の小林義典教授らによって行われた実験では、実際にはフィクスチャーの上に義歯を装着した状態で咀嚼機能の定期的な調査をした結果、約九か月で機能は安定し、正常な機能に回復したことを発表しています。この研究で、歯根膜に代わる感覚受容器が口のなかにあるという仮説が得られて、現在では歯槽骨そのものが感覚受容器として働いているとみられています。 また、臨床的にも、歯根膜の存在の必要性はないと考えられています。ブローネマルクシステムでの治療が始まって30年以上経過しますが、歯根膜がないことで致命的なダメージを受けたという報告はありません。とくにブローネマルクシステムは衝撃が加わったときのことを考えて設計されていますから、安心していただいてよいと思います。
ところで、最近、実験段階ではありますが、コラーゲンを使って歯根膜のあるインプラントをつくる研究がすすめられています。 これはしかし、考えものです。歯根膜があるとより天然歯に近い状態にはなりますが、天然歯と同じ理由で、インプラントを失う確率が高くなってしまうからです。 骨と歯の間に歯根膜という隙間がないからこそ、インプラントは少しの刺激が加わっただけでは揺れません。前にもお話したように、歯の揺れは歯槽膿漏の原因となります。インプラントは揺れないから、歯槽膿漏になることが少ないのです。ところが、歯根膜のあるインプラントは微妙に揺れるはずです。歯根膜があるゆえに歯槽膿漏による骨吸収が起きる可能性が高くなり、やがてインプラントを失うことになるでしょう。
