インプラントの歴史 骨結合の発見

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インプラントはなぜ骨に結合するのか?

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図先ほどから、インプラントと骨が結合するという話をしていますが、正確にいうと、インプラントと骨は直接、接触しているわけではありません。電子顕微鏡で見ると、インプラント、つまりチタンと骨との間には酸化膜が存在しています。

金属というのは、空気に触れると表面がどんどん酸素分子を取りこんで、表面の組成が変化します。いわゆる酸化という現象です。表面の組成が変化した部分を酸化膜といい、酸化した部分はもとの金属とは基本的に違う性質を持つようになります。 インプラントに使うチタンも例外ではありません。チタンをインプラントの形に切り出したときから、酸化膜ができているのです。その厚さは約2〜3ナノメートルです。一ナノメートルは、なんと100万分の1ミリメートル。ひじょうに薄い膜です。 酸化膜には強い防御能力があって、膜のなかの金属、つまりチタンを守ってくれる働きがあります。それだけでなく、インプラントに関しては酸化膜は非常に重要な役割を果たします。実際に骨と結合するのは酸化膜なのです。

なぜ、酸化膜と骨は結合するのでしょうか。 酸化膜と骨との接触面には、ひとつだけではなく、いくつかの力が働いています。 その力が生体の分子を酸化膜へと結合させ、骨結合へとつながっていきます。ちょっと難しいですが、それぞれの力を簡単に説明しましょう。 まずは、酸化膜の引力や分子の隙間が媒介となり生体分子を結びつける、「ファン・デル・ワールス力(物理結合)」。この力は非常に弱い力です。それと同じぐらいの強さで働くのが、血液中にある水分の水素イオンを介して生体細胞を結合させる「水素結合」です。 この2つよりはもう少し強い力を持つのが「電気的結合力」です。生体細胞と酸化膜表面の両方には、双極子というものが数多く存在しています。その双極子の間に結合する力が発生し、生体分子を酸化膜へと引き寄せるのです。

もっとも強いのは、共有結合やイオン結合と呼ばれる力で、ファン・デル・ワールス力の一〇倍近くまでの強さがあります。この力は酸化膜表面の傷やイオンの隙間、不純原子などの存在が媒介となります。 また、これらの力とともに見逃すことができないのは、水分による作用です。インプラントを埋め込むときには、当然のことですが、インプラントは大量の血液に接触します。すると血液に含まれている水分子が酸化膜にくっつくのです。その水分子は、生体の分子を吸着、つまり吸い寄せる作用をするので、結合がしやすい状態になります。

金属は酸素に触れるとどんどん内側まで酸化していって、酸化膜の部分が厚くなっていきます。これは骨に埋められたチタンも同様です。からだの新陳代謝によってつくりだされた酸基と呼ばれるものによって、酸化膜が成長していくと考えられています。空気中にチタンを置くよりも、骨に埋め込んだほうが酸化膜の成長は早くなるという報告もあります。酸化膜が厚くなるということは、時間とともにしっかりと結合するということを意味します。